黒い家


先に貴志祐介の同名の原作本を読んだのですが、あまりにもの怖さ、気味の悪さに本の感想が書けなかったほど。というより人に薦められなかったのです。怖いストーリーは好きですが、気持ちが悪いものは苦手だから。
映画の『黒い家』はとても楽しめました。たしかに怖い映画にはちがいありませんが、小説を読んだ時に感じた後味の悪さをともなう気持ち悪さはあまり感じられなくて、小説の中ではあまりにもグロテスクすぎて引いてしまった場面のいくつかが、映画ではソフトな表現に変わっていたこともよかったのです。

この映画にはリズムがあります。ただ怖いだけではなくて心地よいリズム…
登場人物たちの言動にもどこかユーモアが感じられ、どんどん追いつめられていく心理的な緊迫感の中に、いい意味での「逃げ」が感じられてよかった。心理的な恐怖がいつしか行動をともなった怖さにどんどん変わっていく、その変化もこの映画の見せ場になっています。

なんとも不気味で気持ちが悪い夫婦を西村雅彦大竹しのぶが好演していますが、主人公たちの性格、行動が必要以上に誇張されているせいか、そこにはユーモアさえ感じられ、この演出はとてもよかったと思います。