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・ナチュラル
・1DKクッキン
・お買い物日記 PART-U
・コンセント
・アルジャーノンに花束を
・石垣りん詩集
・ハウス
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『ナチュラル』・谷村志穂(幻冬舎文庫)
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妻子がいるチャオとその友人リキ。ふたりの男性のあいだで揺れ動くナオ。そんな三人の関係が日常的に進んでいきます。力まないで肩の力を抜いて読めるこの本が好き。読んでいるうちに自分の中にあるクネクネしたやわらかい、そしてどうしようもない女の部分が目覚めてきそう。
いつのまにかチャオにとってよく躾された犬になってしまったナオ。頭では嫌っていながら、身体ではリキを求めてしまうナオ。彼女のことを愚かな女、の一言で片づけてしまうことは簡単なのでしょうが、この本を読んだほとんどの女性がナオの気持ちがよく分かるはず。分かるからこそ切なくて、彼女の性が哀しい。
これひとすじ・・そう言い切れる人はきっと幸せな人。たくさん迷って、漂って、苦しいことが分かっていても求めてしまう…そんな弱い部分を私もたくさん持っているから、ナオの気持ち、この小説の内容が心にスーッとはいっていくのだと思います。
この本を男性が読むと、きっと全く違った感想を持つのでしょうね。読み終えた後で思いました。
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『1DKクッキン』・谷村志穂/飛田和緒(集英社文庫)
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おいしいって安心なのだ。
谷村さんの言葉です。おいしいって楽しい、おいしいって幸せ・・この本を読んでいるとしみじみと思います。
料理のレシピがかわいいイラストつきで分かりやすく紹介されているこの本、お役立ちの料理本として読むこともできますが、友人どうしで仲良し、という共著のお二人の会話、そのやりとりが楽しくて、ニコニコしながら読み進んだのです。
市販の調味料を上手に活用することで手間のかかる手順は省き、なによりも美味しく食べる幸せを大切にした、そんな料理たちがいい。
卵焼き作りは宇宙のファンタジー、世界一簡単な五目ずし、ぴかぴか光る白飯…本の中に出てくる言葉たちが、私の中の「料理したい」気分を高めてくれそう。
自宅にぬかみそまで備え付けてある女には…
という文章には思わず苦笑い。だって私のキッチンにはぬかみそが常備してあるのです。ふふ。
マリネにすし酢を使うアイデアはいただき、です。
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『お買い物日記 PART-U』・谷村志穂/飛田和緒(主婦の友社)
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DURALEXのグラス、ピンクペッパー、カトキチの冷凍うどん、オニザキの白ゴマ、陶和の市松模様の砂糖…三年前にこの本を読んでから私が買ったものです。みんなとてもよくて、今でもお気に入りのものたち。
お買い物日記、という名前のとおり、谷村さんと飛田さん、仲良しのお二人が選んだおすすめのモノたちが、自分たちで撮られたという写真つきで楽しく紹介されています。遊び心のたっぷりある二人だから、文章も載せられている写真も素敵なのだけど、どこかあぶなっかしくて、時々いけなかったりもするのです。
谷村志穂から先生とよばれている飛田和緒の、型にはまらない柔軟な物の使いこなしが好き。サテンのパジャマにきちんとアイロンをかけてから眠る、そんな彼女流のこだわりだとか、ていねいな暮らしぶりがよかったのです。
A.P.C.の黒のタートルセーターを、オードリー・ヘップバーンみたいに着てみる。猫のジュリに究極の猫じゃらし、パーフェクト・フェザー・キャットで遊んであげる。髪をのばして、クリップ・クリップという名前の髪止めでシャキッとまとめ髪をつくってみる。アニエスb.のキャミソールを服の胸元から少しだけのぞかせてみる…まだ実現していない、これから私がやってみたいこと。
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『コンセント』・田口ランディ(幻冬舎)
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きれいな言葉、美しいものだけで構成されたお話は嘘っぽいけれど、思わす目を背けたくなるようなおぞましいものが書かれてある小説は苦手。この本を最初読み始めた時、何度も本を閉じようと思いました。死体の克明な描写など読みたくなかった。ましてやそれが腐乱していく姿など。
読み進んでいくうちにどんどんこのお話の世界に引き込まれていき、気がつくと一気に読み終えていたのです。引きこもりの末の衰弱死…兄の死がきっかけになって主人公ユキはある意識への覚醒を経験します。そのための通過儀礼のような辛い体験の数々。
他人から放たれる波動をとても敏感に感じてしまう人がいます。すぐに人の感情に感応、シンクロしてしまう人。そのために自分を消耗してしまう・・・。これは今いろいろと問題にされている引きこもりの原因のひとつになっているのかも、そんなことを思ってしまいました。
家庭内暴力、分裂気味の人や引きこもってしまう人…それらを精神を病んだ人、というワクにひとつにまとめないで、この本にはある可能性(?)が書かれてあります。その可能性が著者のやさしい視点から生まれたものであることを望みます。
普通・・そうではないことの世界を描くことはとても勇気がいること。差別を感じさせないで描ききった、著者ランディさんの筆力はすごいと思いました。
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『アルジャーノンに花束を』・ダニエル・キイス(早川書房)
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精神遅滞者の男性チャーリィが、科学のメスによって天才的な知能を得ます。手術を終え、輝かしい未来と大きな幸せが待っているはずだったチャーリィが見たものは・・・。彼のもつ温かさや思いやりが、知性と引き替えに傲慢で自己中心的なものに変わっていき、孤独が彼を打ちのめします。幸せとはまわりから作りあげられるものではなく、幸せだと思うその気持ちが大切なのですね。今さらのように思いました。
チャーリィが愛する女性アリスと肉体的に結ばれる場面。二人の肉体の結びつきによって、意識は大きな宇宙に向かい、肉体のリズムが心にこだまをひびかせる…こんな文章があります。ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』に、ヘルマン・ヘッセの思想を見いだしたことを思い出した私。この三つのお話にはある共通点があるのです。
チャーリィは知能が遅れていることが不幸なのではなくて、いちばんの問題点は家族、とくに彼の母親にあると思いました。息子であるチャーリィを守ることよりも自分の名誉を守ることをなによりも優先したのですから。
まだ知恵がついていない子供の頃、もっと真っ直ぐに人のことが見えていたはず。賢くなっていくたびに何か大切なものが失われているのだとしたら、それはとても悲しいこと。
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『石垣りん詩集』・石垣りん(ハルキ文庫)
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詩集を手にしたのは久しぶり。美しい言葉しか信用しない人、言葉によけいな飾りをつけたがる人…詩人、とよばれている人たちの私の勝手なイメージ、思いこみでした。あまり気乗りしないまま手にとったものの、読み始めると石垣りんさんの言葉がストレートに伝わってきて、ドキドキしてしまったのです。ただあまい言葉を並べているだけではなく、けっしてきれいごとではない著者の思いが日常の言葉を借りてそこにある、という感じ。詩によっては涙が出てしまったほど。
家族たちを、愛、という名のもとに背負っていかなければならなかった、著者のやるせない思いが詩たちにこめられています。同じ屋根の下、家族と同じ便器を使うことすら耐えられない、日々の現実に押しつぶされそうになった著者のやるせない思いがほとばしり、言葉になってきらめいています。
愛、家族、いたわり・・温かく美しいひびきを持った文章を私たちはよく目にします。現実に向かい日々戦っている人にとっては、あまったるい感傷より力強い生活者の言葉のほうが合っているはず。あくまでも自分の言葉で書き連ねた石垣さんの詩は、さりげないのだけど奥行きが深くて、読むと感心してしまう・・・。おすすめです。
家族からも、家からも、隣人からも、勤め先からも離れ、独りで、自立して生きる魂の世界を持つこと・・・粕谷栄市さんが書かれた解説の一文です。詩を書くこと、言葉を紡ぐことがそうだとしたら、私たちはもっと自由になれるはず。
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『ハウス』・谷村志穂(集英社文庫)
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井上陽水やミッシェル・ポロナレフ…どんなに明るい歌を歌っても、どこか哀しいトーンがぬぐえない歌い手。谷村志穂さんの本を読んでいると、明るいお話であっても、どこか漂う哀しみに心が揺らぎ、登場人物たちのもつ温かさといっしょになって、読んでいるといつも心がホロッとしてしまうのです。
この本には自分の居場所を探し続ける主人公たちの物語が12篇収められています。その場所は人から見るとたいしたことがなくても、自分にとっては居心地がよくて、自分が自分らしく居られる大切な場所・・・。
サラッと洒落たタッチの文体なのにツンツンと取り澄ました冷たい印象を与えないのは、どのお話にも人のやさしさや温かみが感じられるからなのでしょうね。
たとえすんなりと生きていけなくても、器用に立ち回ることができなくても、いつでも一生懸命な主人公たちが愛おしく思えてくる、そんな谷村さんの小説が好き。
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