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・神の子どもたちはみな踊る
・蝶々の纏足・風葬の教室
・ベッドタイムアイズ/指の戯れ 他..
・孤立する妻たち
・作家の値うち
・おしゃべり怪談
・ピアニシモ
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『神の子どもたちはみな踊る』・村上春樹(新潮社)
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阪神大震災に想起された六つの短編が収録されています。
だけど直接震災について書かれてあるというわけではなくて、登場人物たちは自然の大きな力を前に暗喩的になにかに突き動かされ、静かに心の中でなにかが変わっていく・・・そんな様子が描かれています。
「生きていくうえではずせない真実とは・・」みたいな教訓めいたことなどひとつも書いてなくて、どちらかといえばとらえどころがない不思議な春樹ワールドがこの本でも健在。
理屈で分かろうとすると頭が混乱してしまうのは村上春樹のお話の特徴かしら?
読み終えたあとで心の奥に残ったもの、それらを大切にとっておきたい、そう思わせる内容の本でした。
どちらかといえば不器用でちっともかっこよくなんかないのだけど、長い間つきあってはじめて魅力が分かる、そんな登場人物たちがいい。
文中に出てくる「からっぽ」という言葉がとても印象に残っています。
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『蝶々の纏足・風葬の教室』・山田詠美(新潮文庫)
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山田詠美の書かれたものを読むたびに、なぜか登場人物と自分を重ね合わせてしまうのです。
「そうそう、ここのぶぶんは私といっしょ」なんて思いながら読んでしまう。
それは登場人物たちの行っている行為よりも、心のちょっとした動きにそうなるみたいなのです。
この本もやはりそうで、読みながらかつて少女だった自分…まわりから浮いてしまわないように子供のふりをしてちょっとだけ息を潜め、でもとてもませていた自分のことを思い出していました。
少女たちの心の中に潜んでいるすでに女のぶぶん、複雑な心の襞が、時には残酷な行為に走らせます。悲しいことにその対象になってしまった時…どんどんエスカレートするいじめと追いつめられていくひとりの少女の姿がこの本には描かれています。だけど救いは少女が帰った時、あたたかい家庭と家族が迎えてくれること。外の世界が厳しければ厳しいほど、そこにある温かな家庭が際だちます。
山田詠美の本を読むたびにいつも思うのですが、男性の身体にある器官ひとつひとつの描写がとても上手いということ。男性を見る時、いつもまず全体像、全体の雰囲気を見てしまう私なのですが、部分にまず目を向け、そこから官能へのいとぐちを見つける、そんな彼女の視点がとても興味深かった・・・。
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『ベッドタイムアイズ/指の戯れ 他・・』・山田詠美(新潮文庫)
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「愛している」という言葉を何百回くり返しても、頭でっかちな理論をもって愛を語ってみても、五感…官能の感覚にもとづいた表現にはかなわない、この本を読んで私が強く感じたこと。
目、指、匂い…身体全部の器官すべてで相手を感じ、自分の身体を相手に溶けこませていく、その様子は鋭敏で刺激的だけど、どこかやるせない感じでこちらに迫ってきます。身体すべてを総動員して相手を愛したからこそ、その対象を失いそうになった時、その辛さは心の痛みと身体の痛み、両方をともなってしまうのかしら。
身体の感覚とピッタリの相性、ひとつになって求める”快楽”という方向…そんな純粋な愛で結ばれた男と女。そこに生活が介入した時の戸惑いを描いているのがこの本に収められている『ジェシーの背骨』のお話。愛する人の子供の出現に戸惑い苦しむ主人公の女性ですが、無理に子供の母親の代わりにになろうとするのをやめ、「子供の父親の愛する女性」という、ひとりの人間してその子に向き合う決心をする、そんなくだりが印象に残っています。
”愛”にいつのまにか付属してしまう雑多なもの…それに折り合いをつけていく様がよかった。
性描写が多いのに不思議といやらしくないのは、詠美さんの文体が小気味よいほど簡潔で、サラッとしているからなのでしょうね。
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『孤立する妻たち』・武藤清栄 他..(宝島新書)
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今までさんざん語り尽くされた感のある「専業主婦の憂鬱」のような内容を想像していたのですが、実際に悩みをかかえた人たちの相談にのっている現役のカウンセラーたちが書かれた本ということで、現実味を帯びた内容がこちらに迫ってきます。
育児、夫婦の問題、公園デビュー…孤立した妻たちの心の叫びが文中から聞こえてきそうな、そんな本。そして妻の問題を語るときパートナーである夫の問題が浮かび上がり、家庭の中で居場所をなくしつつある夫の存在がクローズアップされていきます。
問題は、こうした夫婦間のトラブルが弱い立場の子供たちの心に大きく影響してしまっていること。妻たちの悩みが書かれた本であったはずなのに、読んでいくうちに変えられない自分の境遇とその運命に翻弄されている、そんな子供たちの心の叫びが聞こえてきそうでした。
数人による著者で書かれた本だからしかたがないのでしょうが、1冊の本の中にいろんな問題があまりにもたくさん詰め込まれすぎていて、頭の整理がきちんとつかないまま読み終わってしまった、そんな読後感が少し残念です。
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『作家の値うち』・福田和也(飛鳥新社)
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エンターティメントと純文学の現役作家の主要作品たちを100点満点で採点したブックガイド。興味津々、といった感じで手にとった本です。
自分が好きな作家やひいきにしている作品が高得点だと喜び、そうでないとガッカリしながら読み進んでいった私。村上春樹など著者が高得点をつけた作家に対する、こちらが戸惑ってしまうほどの手放しの誉め方に対して、渡辺淳一や鈴木光司など軒並み低い点が並んだ作家に対しては、「なにもここまで…」と思わせるほど、ズバッと切り込んでいます。たとえ酷評でも長くていねいに書かれたものは、その作家にたいする期待感、だとか著者なりのエールを感じますが、数行で終わらせている評を前に、どんな辛辣な批判の言葉よりも冷たいものを感じた私です。
わざわざ難解な言葉を選んで書いてあるような著者の記述が目立ち、文章からうける印象はどちらかといえば私の苦手とする理屈っぽいタイプ。だけど彼は評論家だもの、ようく考えたらあたりまえのこと、なのですね。
エンターティメントと純文学の違いやそこで活躍している作家の位置づけ、日本文学の未来の予想図、みたいなことがコラムとして書かれてあって、私の知らないことばかりだったので勉強になりました。
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『おしゃべり怪談』・藤野千夜(講談社)
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四つのお話が収められている短編集です。『夏の約束』を読んだ時に感じられた、いけないこともフワッと受けとめてくれそうな、そんな著者のやさしいまなざしがこの本でも感じられました。
悲しい、寂しい、心の動揺…そんな負の感情をバーッと言葉に出してしまうのでなくて、日常のちょっとした場面やふとした行動、何気ない会話などにそれらが見え隠れする、そんな藤野千夜の書く文章が好き。
題名は「おしゃべり・・」とついているのに、ちっともおしゃべりではない彼が紡ぎ出す言葉たちはどこかたんたんとしているのだけど、ぜんたいを通して読むときちんと登場人物たちの心情が伝わってきます。世間の常識からすると外れてしまう人や人生の寄り道をしている人たち…大げさな表現などしないで、それらをまるごとそのまんまで書いてあるのがいい。
やさしさ、それが文書に出ることをあらためて思いました。
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『ピアニシモ』・辻仁成(集英社文庫)
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転校、いじめ、引きこもり、伝言ダイアル…この本を表すいくつかのキーワード。ため息が出そうなほど暗いけど、これはまぎれもない青春小説。辻仁成の処女作です。
青春小説といえば最近では軽いタッチやおしゃれな作品が多い中、この本に描かれているのはあまりにも荒涼とした主人公トオルの青春の日々。行き場のない憤りや悲しみ、孤独感などをもうひとりの自分ヒカルの存在を作ることでなんとか自分を保っているトオル。そしてヒカルの存在を葬り去る時、そこには過去の自分から抜け出し、新しい自分に生まれ変わろうとする主人公の姿があります。
転校をくり返すトオルがその学校や教室の雰囲気、そこの生徒たちと馴染もうと自分を殺して息を潜めるその姿が痛々しい。それに追い打ちをかけるように集団のもつ狂気や思春期特有の残酷さが彼を打ちのめします。彼の荒んだ心が一筋の光を求めてそれにも裏切られ、でもそこから這い上がっていこうとする…自立への一歩を歩みだしたトオルの姿がすがすがしい。
著者の心に残る、昇華されなかったいろんな思いが一気に吐き出されていく、まるで辻仁成の私小説のような本。
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